ロンドン・マリガン導入。
このニュースにはとても驚かされました。モダン以下の環境では明確にこのマリガンルールの影響は大きすぎるのではないかと思っていたからです。
しかし導入に当たっての記事ではそれらの影響よりも、スタンダードや特にリミテッドに与える良い影響が優ると説明がありました。確かに、新しいマリガンルールは特にリミテッドのような比較的貧弱なカードを使うフォーマットであればあるほど"助かる"システムであることも事実です。
前回バンクーバーマリガンを導入した時の記事によると、

7-7-7シャッフル
 これはプロツアー『マジック・オリジン』で行われた占術マリガンと似たような試みですが、ある意味もっと強力です。基本的に、マリガンするごとに7枚引き、その後使わないカードを取り除き、マリガンごとの適切な数まで減らします。その結果、妥当な手札が来る確率が上がります。

良かったところ
 リミテッドではかなり適正なパワー・レベルに近いように見えますが、いくつか問題があります。基本的に一番重いカードをシャッフルして戻すことになりますが、それが明確でない場合何を戻すかの選択はかなり難しくなります――そして普通のマリガンよりも時間がかかります。

良くないところ
 このマリガンは構築フォーマットでは強すぎ、デッキ構築の大きな変更を助長します。多分最も注目に値することはモダンやエターナル・フォーマットで、シャッフルして戻すことができるためにサイドボードの対策カードがとても強くなることです。同じように、コンボ・デッキも使えないカードをマリガンできるので巨大なアドバンテージを得ます。このマリガン・ルールが我々のマリガン変更のルールに違反している最大のものの1つは、明らかにデッキ構築のパラメーターを変えてしまい、古いフォーマットのプレイ方法に大規模な影響を与えることです。
と指摘されていました。
時代が変わり、マジックの競技シーンのデッキやカードが変わったことで、過去の判断から変わることもあるのでしょう。
ともかく。私はモダンを中心に嗜んでいるので、特にモダンに与える影響を考えられればと思います。

マリガンの歴史

マリガンの変化を語るのだから折角です。マリガンの歴史について軽く触れていこうと思います。
マジックには最初、マリガンのルールは存在しませんでした。手札を7枚ずつ引いたら、それがどれだけ勝負にならない手であろうと、勝負する。魔術師同士の決闘に相応しい、ある種漢らしいルールでした。

しかし発売翌年辺りから、競技プレイが始まるにつれ、勝負にならなさ過ぎるゲームを是正する動きが現れたようです。その結果導入されたのが、ノーランド/オールランドマリガンです。手札に土地が1枚もない、手札が全て土地の場合にしかマリガンができない上、手札を全て公開した上で1度だけ7枚引き直すルールです。引き直した手札がどうであれ、再度のマリガンはできません。
その後、マリガンするかどうかはプレイヤーの自己判断で行えるようになったのがパリ・マリガンです。とは言え、プレイヤーの完全な自由意思でマリガンをさせると、「最高の初手」になるまでマリガンを繰り返すことは目に見えていたので、マリガンを1度するごとに手札が1枚ずつ減っていくというペナルティを設けました。そうすることでマリガン回数を抑制しつつ、勝負にならないゲームを軽減できると考えたようです。
しかし、やがてこのマリガンルールも、「マリガンをした側が不利になりすぎる」という点が問題になり、バンクーバー・マリガンが導入されていきます。パリ・マリガンの導入からバンクーバー・マリガンの導入までおよそ18年間。マジックの歴史の大部分はパリ・マリガンで行われていたのです。

バンクーバー・マリガンは基本的にはパリ・マリガンを踏襲しながら、マリガンした側にも勝負になるゲームの機会を与えるために、マリガン後に占術1を行えるように改良されました。これで多少はマリガン側が一方的にやられるしかないゲームが減りました。
そして今回、マリガンするごとに手札を7枚引き直し、マリガンした回数だけ手札を山札の下に戻す、ロンドン・マリガンの導入が決定しました。このマリガン手順はコンボデッキがコンボパーツを集めやすすぎるのではないかという問題点がありましたが、ミシック・チャンピオンシップ等で実験的に採用した結果、今回正式採用に至りました。

マリガンの歴史は常に、「勝負にならないゲームを減らす」と、「マリガンの回数を抑える」「適正なバランスのデッキを組むメリットが十分にある状態を保つ」「マリガンによって過剰に有利を得るデッキがないようにする」というバランスの上を歩んできました。

モダンへの影響

さて。そんなロンドン・マリガンは、当初「影響が大きすぎるのではないか」と心配されていたモダンにどのような影響を与えるのでしょうか?
私が考えるにモダンのデッキには典型的な系統が3種類あると思っていて、

  1. 特定のカードへの依存度が高い。:コンボデッキの多く、トロン、鱗親和など
  2. カードごとの役割分担がある。:コントロールデッキの多く、感染、呪禁オーラなど
  3. 全体的に均質なカードの集まり。:アグロデッキの多く、バーン、人間など
それぞれの系統によってロンドンマリガンの恩恵は異なると考えています。

特定のカードへの依存度が高いデッキの場合、従来のマリガン・ルールよりもデッキの核となるカードをマリガンによって探しに行きやすくなっています。その点でかなり前向きにロンドン・マリガンで強化されたと言って良いでしょう。
特に《硬化した鱗》《霊気の薬瓶》《精力の護符》のような、序盤に設置できるかでデッキの動きが変わるカードを探しに行きやすくなったのは嬉しい報せでしょう。そういったデッキは従来に比べてマリガンの判断に踏み切りやすいです。

カードごとの役割分担があるデッキも、マリガンした際に手札を大幅に整えやすくなりました。感染のように、土台となるクリーチャーと強化手段などとデッキ内のカードの役割が別れているデッキの場合、マリガンが強化されることは初手のバランスが整うことに繋がるため、望ましい変更です。
コントロールデッキも、序盤に不要なフィニッシャーを戻したり、除去とカウンターのバランスを取れるので、比較的恩恵を受けられます。不安要素のある手札を妥協してキープしなければならなかったデッキへの救済策になります。

全体的に均質なカードの集まりであるデッキは、もともとマリガンをあまりしないのでマリガン・ルールの変更の恩恵は薄いと言えます。バーンのようなデッキがマリガンが必要になることは稀でしょう。
えてして初手を整えることよりも手札の枚数の方が重要になるデッキが多いので、ロンドン・マリガンになってもマリガン基準はほとんど変わらないでしょう。

どの系統のデッキにせよ、サイドボード後はサイドボードカードを探すためにマリガンすることが従来より容易になります。とは言っても限度がありますが。特定の対策カードで機能不全いなるデッキは厳しい立ち位置にあります。
また、いくらマリガンのペナルティが軽くなったとは言え、マリガンをすることで間違いなく手札は減ります。マジックはほとんどの場合、カード1枚に対してカード1枚で対処していく交換を繰り返すゲーム展開となることが多いです。そうしたゲームにおいてマリガンによる手札の減少は決して無視できないペナルティです。

終わりに

マリガン・ルールの変更で間違いなく勝負にならないゲームは改善されます。デッキによっては他の多くのデッキと比較して良い影響を受けることができるかも知れません。
しかし、マジックの基本である、適切なデッキ構築と明確なゲームプランこそが、新しいマリガン・ルールの恩恵を受ける最善の方法であると信じています。マリガンを想定したデッキよりも、そもそもマリガンが必要にならないように心がけているデッキの方が強力であることを念押しするまでもありません。
今回の変更にあまり神経質にならずに、必要以上に悲観したり身構えたりせずに、普段通りのマジックを繰り返していきましょう。そうすれば少しだけ良くなったマリガン・ルールがきっと恩恵をもたらしてくれます。