グランプリ静岡後にTwitterでスリーブ関係の話題を多く見ました。
曰く
「スリーブで『ゲームの敗北』を受けかけた」
「競技REL向けのスリーブの作法が云々」
というような内容です。
個人的にも今後競技イベントには多く出ることになると思うので、分かった内容、考えたことをまとめてみました。

大前提

スリーブの使用云々の前に大前提として、
「プレイにあたって個別のカードが区別できるようになっていてはいけない」
という理念を理解しておく必要があります。
カードが区別できるようになっていると、山札の一番上のカードを見て、裏向きのままで「次のカードは土地だから、このカードからプレイしよう」「次のカードがあのカードだから、このカードは取っておこう」というような判断ができ、通常よりも有利なプレイが可能になってしまいます。
カードを側面から見た状態で区別がついてしまうと、シャッフルした山札を横から見て、「山札全体に土地カードがバランス良く散っているからスムーズにデッキが動くぞ」というような、イカサマすら可能になってしまいます。
そのため、カードは個別で区別ができないようにしなければなりません。

どんなカードも剥き出しで使っていれば必ず傷がつきます。
特に土地カードはそうそう入れ替えることもありませんので、カードを剥き出しで使い続けていれば、土地カードが比較的痛みやすく、「フチが擦れているのが土地カード」という判断ができるようになってしまいます。
ある程度傷んできたカードを入れ替えれば解決する話ですが、高額なカードを都度入れ替えるというのは現実的ではないので、スリーブに入れて使用します。
スリーブが傷ついたらスリーブだけを入れ替えればそれで良いので、カードそのものを入れ替えるよりも安く上がります。

スポンサードリンク

スリーブの個体差

カードはスリーブに入れて使用し、傷ついたりして区別がつくようになってしまったスリーブは入れ替えればカードを個別に区別することはできない。という理解で大きく問題はないのですが、今回Twitterで見たケースは更に厄介です。
問題になったのは、「大会前日に新品のスリーブを開封し、デッキのスリーブを全て新品に入れ替える」という、最も慎重な策を取ったプレイヤーだったのです。
開封したてのスリーブでも「区別ができる」とされた最大の理由は、スリーブの「個体差」というものにあります。

OI000019
上の画像のスリーブの束の赤矢印の部分に白い線が入っているのが見えるでしょうか?
スリーブは工場で機械によって製造されていますが、その過程で僅かにサイド部分のカットが変わってしまい、画像のように側面が白くなるものができます。これがスリーブの「個体差」です。
この違いはデッキの形に積み上げても画像のように容易に側面からその位置が確認できてしまうので問題視されやすい。ということは理解して頂けるでしょうか?

このサイド加工の個体差は多くは工場におけるカットの段階で発生します。スリーブの製造過程を実際に知っている訳ではないのですが、同じ袋から出てきたスリーブの側面の加工の具合はほぼ同じなので、どうやらカットした束のまま袋詰めしているようなのです。
そのため、スリーブにこだわる人の間では「ロット差」などとも呼ばれています。スリーブを製造する際にカットや袋詰めをまとめて行う束――ロットごとの個体差、という訳です。
そして違う袋から出てきたスリーブは、同じメーカーの同じ商品であっても、サイドの僅かな加工の違いから、「区別できる」と判断されることがあるということです。

スリーブには、
のような、「商品としてはひと塊だが、1つの商品の袋の中に個包装されたスリーブが2つ入っている」という商品があります。
これらは別の袋であって、全く別のロットのスリーブが1つの商品の袋の中に同居していても何ら不思議はありません。
前日に開封したスリーブで「区別できるスリーブ」として違反を取られそうになったケースも、こういった「1つの商品の中に、別ロットになり得る2袋のスリーブ入り」という形態のスリーブを使用したためであるようです。

自衛策

せっかく多額の参加費を払って参加する競技イベントなのですから、スリーブの不備で罰則を受けることは極力なくしたいところです。
ここではスリーブからできる自衛策を紹介していきます。

競技目線でスリーブを選択する

「それぞれ別々の袋から出てきたスリーブだと、個体差の問題でどうしても「区別している」と取られる可能性があるのだから、1つの袋から出てきたスリーブで1つのデッキに使うスリーブを全てまかなってしまえば何の問題もない」という発想がありえます。
1つのデッキ分、すなわち75枚以上が1つの袋に入っているスリーブ、というのはかなり限られています。
代表的なのが、アルティメットガード社 スタンダードサイズ UX マットスリーブで、自分も愛用していますが、正直1枚あたりの単価はスリーブの中でも比較的高くなると思います。
また、80枚入りなので、確かにサイドボード込みで足りはするのですけど、トーナメント中に裂けたりした場合、5枚しか予備がない点がネックと言えます。
1袋で100枚入りとかそういうスリーブがないかと思っています。

スリーブの入れ方を工夫する

スリーブに個体差が生まれてしまうことは仕方ないとして、その個体差が戦略上何の意味も持たなければ問題視はされにくいです。
今回調べて分かったことですが、競技プレイヤーの間で「異なる袋のスリーブを混ぜて使う時は、デッキのカードをサイドボード含めてシャッフルして、それにスリーブをかけていく」という手法があるということです。

デッキにスリーブをかける時によくやりがちなのが、デッキのカードをタイプ別、マナコスト別に並べて、デッキリストに書いてからそれをスリーブに収めていく、という流れです。
この方法でやると、デッキの土地以外のカードが概ね40枚程度なので、40枚×2袋のスリーブをかけていく時に、デッキの土地以外にスリーブをかけたタイミングで袋が変わり、デッキ内で土地とそれ以外でスリーブが綺麗に分かれてしまい、デッキ内の土地の分布が横から見るとサイドの加工の仕方で分かってしまう、という一番疑われる状況に自然となってしまいます。
それを防ぐために、デッキにスリーブをかける前にデッキのカードをサイドボードを含めてシャッフルして、バラバラの状態でスリーブをかけていくことで、スリーブに個体差があったところで、違いからカードの情報が得られないため問題視されにくくなります。

そうは言っても1つのデッキに区別できるスリーブが入っている問題は据え置きですし、「シャッフルの結果、偶然意味のある組み合わせのカードにスリーブがかかってしまう」ということがあり得ますので、どうしても1袋に75枚以上入っているスリーブを見つけられない時の手段となります。

雑感

正直、スリーブに対する目がここまで厳しくなると、個人的には「面倒くさい」以外の感想は抱けなくなります。
そもそも現実世界の物体に「寸分違わず完全に同じ」なんてこと自体がありえませんし、それを「区別できる」か否か、ってかなり人間の曖昧な感覚で判断しようとしているのが面倒くさいです。
生みの親が数学者だからか、イベントの運営においてもかなり数学の問題じみた理想化された状態を想定しているように思います。

シャッフルの仕方にしても、スリーブの区別の可能性の有無にしても、現実世界で行われている以上、プレイヤーの手品的な技量によってどうとでもしようがあります。おそらくそれなりに熟達した手品師にかかれば、イカサマの完全犯罪は可能でしょう。
悪意のない参加者に、疑われないためにスリーブを買い替える負担をかけるだけの中途半端な制約をかけて、何か対策を打ったつもりになっているのが滑稽でなりません。

そこまで公平性を期すのであれば、せっかくMagic OnlineやMagic Arenaがあるのですから、競技イベントはゲームセンターの格闘ゲームのように向かい合う筐体でデジタルカードゲームで戦えば良いと思います。
紙というイカサマウェルカムな媒体でやっておきながら、イカサマに目くじら立てるのはそろそろ時代錯誤と感じています。
高価値な賞がかかった競技性の高いイベントを未だに紙でやっているのは、麻雀のプロの対局を手積みでやっているようなものではないか、と個人的には思っています。

スポンサードリンク